「警備の裏をかくことも、穴をつくこともできる。四條とつながりを持つこともできた。うるさく言うな」




 警備の裏をかき、穴をつく?

 それはまるで、悪人側の発言でございますが…。




「…帰ったら、“夜城(やしろ)”を今より揺るぎないものにする。表の名家と取り引きできるようになれば、うちに手出しできる人間は――」




 バサバサッと、私は開いたままの窓から外に飛び立ちました。

 ヤシロ、表の名家。

 それに警備を突破することを想定したようなあの言い方。


 最初に頭に浮かんだ通りでした。

 ヤシロとは、裏社会を牛耳(ぎゅうじ)る一族・夜城のこと、だったのでございますね。

 早くお嬢さまにお知らせしなければなりません。


 夜城壮士さまを信用なさってはいけません、あの方よりも危険な人間はおりません、と。