「…俺だ」




 電話がかかってきたようでございますね。

 こういったときに物音を立てては、離れられて会話が聞けなくなってしまいます。

 今は、静かにしていましょう。




「…そうか、四條(しじょう)の依頼を受けたのは……いや、放っておけ」




 おや…私共のお話でしたか。




「あぁ。…こっちも、目的はほぼ達成してる。だが、念のために卒業まで…」




 目的…私の調査対象でございますね。




「四條家に忍び込んで、ここに来た成果は確認した。今日も、出かけた先で警備状況を把握できた」




 警備状況の把握。

 それが、ヤシロさまの目的に関わるもの、のようですが…。

 脳裏(のうり)に、大旦那さまよりうかがったあの一族の名が浮かんで、首を振りました。


 動いたせいで、ヤシロさまに目を向けられてしまいましたが。