「いらっしゃいませ」




 宝石店に入って壮士(そうし)センパイの様子をうかがうと、特になにをするでもなく、商品棚に目を向けている。

 あんな言い方をしてたくらいだから、宝石を買うつもり、とかではないと思うんだけど…。




「壮士センパイ、ここでなにするの?」


「…瑠奈(るな)はふつうにしてろ」




 ふつうに、って言われても。

 目的が分からない分にはやりようが…まぁ、宝石を見てればいいのかな。

 私はため息をついて、商品棚に近づいた。


 壮士センパイも、うしろから近づいてくる気配がする。

 真珠(しんじゅ)のピアスに、オパールの指輪。

 ターコイズのネックレスも可愛いなぁ。




「壮士センパイはどういう宝石が好きなの?」


「モリオン」


「黒水晶かぁ…なかなかセレブな趣味してるんだ」