いつもは男装のチェックに使う鏡と向き合って、ナチュラルメイクをしていく。

 まつ毛をカールさせて、自然な血色(けっしょく)に近い色のリップを塗って。

 満足がいくくらい見た目が整ったところで、玄関をノックされた。




「俺だ」


「はい」




 メイク道具を片付けて、小走りで玄関に向かう。

 まだ日中だから他に人はいないと思うけど、念のため控えめに扉を開けると、私服姿の壮士センパイが立っていた。




「…」


「どうぞ、中に」




 最初に見たときも私服だったけど、制服姿を見たあとの私服というのもこれまたドキッとする。

 若干ほおが熱を持っている気がするから、ときめいたことが顔に出てしまったかもしれない。

 上目遣いに壮士センパイを見ると、扉を大きく開かれた。