力なく笑うと、ぽんぽんと頭をなでられた。




「悪い人間に愛されてるかどうかより、いい人間に愛されてるかどうかのほうが重要だろ」


「…」




 お母さまは間違いなく私を想ってくれている。

 おじいさまも、私を愛してくれていた。

 確かに、それで充分なのかもしれない。




「俺も瑠奈を愛してる」


「っ、え…!?」




 ばっと顔を上げると、まっすぐ見つめられる。

 これはウソ?

 でも、こんなウソを、すぐつけるものなの?




「…壮士センパイって、もしかしてすごく悪い人?」




 返事は、妖しい微笑(ほほえ)みだけ。

 とんでもなく悪い男に、つかまったのかも…。

 ため息をつきながら、私は壮士センパイの胸にひたいを押し当てた。