「私…怖い…」




 お父さまに立ち向かうのが。

 実の娘を平気で殺そうと考えられる人だ。

 逃げてしまいたい。


 お父さまに見つからない、遠い遠い場所へ。




「…」




 両手で顔をおおうと、背中に手が回った。

 ぎゅっと抱きしめられて伝わる体温は、泣きそうになるほど温かくて、控えめに壮士(そうし)センパイの学ランをつかむ。




「私を…守って…」


「…瑠奈(るな)四條(しじょう)でいるなら」


「っ…」




 優しく抱きしめるくせに、そうやって突き放すんだ。

 好きなのは私だけ、それも仕方ないけど…。




「…昨日、私にキスしたでしょ。今だけ、私の彼氏になって。それが対価」


「…いつまで?」


 ――キーンコーンカーンコーン