きっぱりと断って、浜川先輩は階段を下りていく。
引き留めようと思ったけど、最大のメリットを提示して断られたばかりなのに、他になにを言えばいいのかと迷いが生じた。
その間に、浜川先輩の姿は見えなくなる。
「はぁ…どうすれば…」
しゃがみこんで、頭を抱えた。
「あの言い方は、怪しい話にしか聞こえないぞ」
「っ、壮士…センパイ…」
階段下から、心臓が跳ねてしまう声がする。
顔を上げると、階段を上がってきた壮士センパイは、私のうしろにある屋上の扉に手をかけた。
ポケットから取り出した鍵束を使って、屋上の扉を開ける。
「来い」
私に視線を向けて、一言告げたあと、扉の向こうに消えていく壮士センパイを見て、私は慌てて立ち上がった。
屋上に出ると、涼しさをともなった風が吹き抜ける。
私は扉を閉めてから、フェンスのほうへ歩いて行く壮士センパイを追いかけた。