Side:四條(しじょう)瑠奈(るな)


 3年の教室がある階に来ると、自然とB組の教室を見てしまう。

 あんなふうに優しくされたら、もっと好きになるに決まってるじゃん…っ。

 それでいて、私の望みは、かなえてくれないんだから、本当にずるい人。


 しかも、彼女持ちだし。




「あれ、西條(にしじょう)くん?」


「っ、あ…」




 さわやかな声を聞いて、慌ててA組の教室に視線を戻す。

 開いた扉から出てきたのは、最近よく観察していた浜川(はまかわ)さん。




「…今日は、逃げないんだ?」




 にこっと笑いかけられて、手を握る。




「浜川先輩。あの…お話があります」


「うん。人がいないとこ、行こっか?」