ひざをついて、瑠奈の頭を胸に抱き寄せた。
俺と出会ったあの日から、安心できる場所なんてなかっただろう。
俺を信頼できる人間だと思っているなら、俺の腕の中で、少し休めばいい。
「…私がどれだけ怖いか、分かる…?」
「…想像はできる」
「本当に怖かった。生まれて初めて死ぬかと思った。周りの人間が、誰も信用できなくて…」
震える手が、俺の学ランをつかむ。
俺の本性も知らずに、すがりついてくる小さな存在が、笑ってしまうほどカワイクて。
「…っ、でも、私には他にも味方、いるから。壮士センパイしか信頼できないわけじゃない。…やっ、そもそも信頼してるわけじゃ…!」
「…」
想像に反したそのささいな反抗が、気に入らないと思った。
理屈をつけるなら、瑠奈の中で俺の重要度が下がるのは将来望ましくない、ということになるが。
本能のささやきに気づかないほど、俺は鈍くない。