「お嬢さま、ただいま戻りました。奥様には家出をすると伝えて、もろもろの許可をいただいて参りました」


「気が()くじゃん」




 ただでさえ寝たきり状態のお母さまに、心配をかけるわけにはいかないから。




「学園への連絡は私がいたします。必要書類の受け取りはお嬢さまにお願いしてもよろしいですか?」


「いくら優秀な執事と言えど、見た目がインコじゃ相手にされないもんね。いいよ」


「それが難儀(なんぎ)なところでございますね。奥様に記入していただく必要がある書類は、私が人目につかないよう届けに行きます」


「うん。それじゃあ夜の間に行こう、セージ。使えそうなホテルは頭に入ってるでしょ?」


「もちろんでございます」




 そうして私は、流暢(りゅうちょう)にしゃべるインコの執事、セージと共に、慣れ親しんだ屋敷を抜け出した。

 お父さまから、自分の命を守るために。