「瑠奈のほうは?」


「っ、な、まえで…」




 高い声に戻って、赤くなった顔を(そむ)ける瑠奈は、箱入りのお嬢さまらしく扱いやすい。

 このまま動揺させて、俺を無視できない存在にすれば…。

 そんな(たくら)みは、頭の中に隠しておく。




「…信用できないの。お父さまみたいに裏があるんじゃないかって思って」


「…浜川(はまかわ)に、裏はない」


「どうしてそう言い切れるの?」




 きっ、と疑心に満ちた、不安げな目を向けられて、腰を上げた。

 警戒するような視線を受け流して、ウィッグだろう髪をなでる。




「含みがあるやつは、見ていれば分かる。俺を信頼したなら、俺の目も信じておけ」


「っ…信、頼…した、わけじゃ…」




 泳ぐ目は正直だ。

 赤いほおも。