とはいえ、そんな理由で隠していたとも思えないが。




「…どこに、向かってるんですか?」


「ジム」


「え…」




 イヤそうな声が聞こえて顔を見ると、思った通り引きつっている。

 顔に出やすいお嬢さまだ。

 それから、話しかけられることもなくジムにつくと、受付にカードキーを渡された。




「ごゆっくりどうぞ」


「あ、どうも…」




 地声よりは低くしゃべっているみたいだが、瑠奈の声はまだ高い。

 転校当時も、女みたいな転校生が来たとうわさになって、それからまもなく落ちこぼれだとうわさになって。

 お嬢さま扱いをした結果、最終的に“お姫さま”と呼ばれるようになったのは多少申し訳ないとは思っている。


 立ち並ぶトレーニング機器を素通りして、最奥の扉にカードキーをかざし、中へ入ると、VIP専用の休憩スペースに迎えられた。