Side:八代(やしろ)壮士(そうし)




「勝手に外出ていいんですか…?」


「元々、授業を休む権利は外に出るためのものだ」




 小さな体に似合わない学ラン姿で、瑠奈(るな)はきょろきょろと辺りを見回す。

 体を縮こめているのは、授業中に学校を抜け出すことへのうしろめたさ以外にも、原因があるんだろう。


 四條(しじょう)家のお嬢さまをどこに連れて行こうか、と考えて、ひとまず見知った場所へ向かうことにした。




「あ、あのっ…!」


「ツレでいる間は、誰にも手を出させない」


「…あ、ありがとう、ございます」




 …一時はため口だったのに、また敬語に戻ったな。

 四條家の人間が度々存在を口にしてはいたが、世間の目にさらされることはなかったお嬢さま。

 ベールに包まれた素顔は、隠したくなるのも分かる至宝だった。