私は窓を開けて、セージが飛び立てるように道を作った。

 目の周りだけ白いセージが宵闇(よいやみ)へ飛び立っていくのを見送って、ひんやりとした風をほおに受ける。

 日中はかすかに残っている夏の気配も、夜になればすっかり消え去る。


 私は、着替えと、お小遣いが入った通帳や印鑑(いんかん)など、最低限必要な物を部屋のあちこちから引っ張り出して、バッグに詰め込んだ。

 本当はキャリーケースを使いたいけど、別の部屋に保管されてるし…。

 スマホも、GPSで位置がバレるから置いていかなきゃ。


 男装するためのウィッグや胸潰しは後で買うとして…。

 実の父に命を狙われているという不安を胸の奥に押し込めて、私は屋敷を出る準備を整えた。

 セージが足首に丸めた紙を結びつけて帰ってきたのは、ちょうど一息ついたころ。