それ以上詳しく説明する気はない、とでも言うように、壮士、さん…とは呼びたくないからセンパイ、は目を伏せて私の手をはがす。

 空き教室を出て行く彼を見て、「ちょっと!」と声を上げてから、廊下に響いた自分の“高い声”に気づいて口を押さえた。

 その間にも壮士センパイは廊下の奥へ歩いて行くから、私は慌ててその背中を追いかける。


 でも、すぐにチャイムが鳴って、私は教室に戻らざるをえなくなった。

 3時間目は座学。

 理解しきれない内容に脳みそは悲鳴を上げている。


 それにキスの衝撃で一度は吹き飛んだけど、私の体には疲れがたまっているわけで。

 次の休み時間には、私は机の上でぐったりしていた。




「お姫さま、また八代先輩に運んでもらったんだって?うらやましいぞこの野郎」


「うぅ、やめてよ…」




 頭をぐりぐりされて、ウィッグが外れないか気にする。

 …あ、そうだ、あの人のこと聞かないと。