「対価は…」




 ふっ、と笑うような吐息を漏らして、八代さんが私の唇を食べた。




「っ~~!?」




 かぁっと体が熱くなって、心臓が活発に動く。

 急な体の変化に頭もくらくらしたのだけど、おどろきすぎたせいか、突き飛ばすという選択肢が頭に浮かばなくて。




「これでいい」




 八代さんが離れるまで、私は動けなかった。

 ぺろりと唇をなめる八代さんを見ながら、ガラガラと大事なものが壊れていくような感覚に襲われる。

 きっと首まで真っ赤になったままフリーズしている私を見て、八代さんはやっぱり妖しく微笑んでいて。


 ドラマに出てくるような悪い男というのは、こういう人間のことを言うのだと悟った。