「それよりも」




 八代さんは目を開けて、口元にほんのりと笑みを浮かべた。




「どうして父親に命を狙われているのか…調べてやろうか?」


「え?」




 妖しい微笑(ほほえ)みにはある種の色気があって、ドキッとする。

 その上、八代さんはゆっくり私に近づいてきて、人工の短い髪に触れた。




「四條元嗣よりも…瑠奈のほうに興味がある」


「っ…!?」


「ベールに包まれた四條のお嬢さま。触れたのは、俺が初めてか?」




 陶器の感触を味わうように、ほおをなでて、くいっとあごを持ち上げる。

 きれいに弧を描く唇と、関心を宿して見つめてくる瞳の破壊力は想像以上だった。

 顔が急速に火照(ほて)っていくのを感じる。