あのときは助かったけど、謎のイケメンの正体が護國学園の生徒だったなんて…。
廊下の先に保健室が見えてきたし、向かう先は宣言通りみたいだけど、私が女だってしゃべらない保証はない…!
「あ、あの、僕の正体は…!」
顔を伏せたまま、万が一居合わせた人に聞かれないように、と小声でしゃべったから聞こえなかったのかもしれない。
八代さんは返事をすることもなく、歩みを止めることもなく。
「あのっ、私の正体は…!」
顔を上げて、声のトーンを戻すと、八代さんはちらっと私を見て背中の手を動かした。
からからと扉の開く音がする。
やばっ…!
「あら、八代くん、と…」
「バテてた」
どうかなにも言われませんように、と顔を背けて、強めに八代さんの肩をつかんだ。