「う、ぐっ」




 私を襲った男の首を、ひじを引っかけるようにして背後から絞めているイケメンは、触れたら切られてしまいそうな、鋭利(えいり)な雰囲気をまとっていた。




「残り3秒がお前の寿命だと思え」


「こ、殺せって言われたんだ!四條(しじょう)家の当主に!」


「え…?」




 命乞いをするように吐き出された言葉が、信じられなかった。

 なんでお父さまが私を…?




「ウソだったら…」


「ウソじゃない!本当だ!四條(しじょう)元嗣(もとつぐ)が言ったんだっ、西條瑠奈って女を殺せって!写真も見せられた!」




 男は暴れるようにポケットを探って、そこから取り出したものを放り投げた。

 ひらひらと舞い落ちるそれには、長い黒髪を姫カットにして、垂れ目を細め、上品に微笑(ほほえ)む女性が写っていた。

 お嬢様学校として有名な、私立大聖(だいしょう)学園入学式、と書かれた看板を隣にして。