私のうしろを歩いていた男の人が、ぼそっと呼んだ名前におどろいて、思わず振り返った。

 迫る手を、()けられるほどの時間はなく。

 気づいたら、ぐぐぐ、と首を()められていた。




「っ、ぅ!?」




 とっさに、首に伸びた腕をつかんで引きはがそうしても、筋肉質で硬い腕はぴくりとも動かず。

 やばい、死ぬ、とすぐに悟って青ざめた。




「…、…っ」




 助けを求めようにも、声が出せない。

 最初から私を狙ってたんだ、ホテルに行きたいっていうのは口実で、私を人気のない場所に誘い込むために、と意味のないことを(またた)く間に理解する。

 どうして、どうして、どうして。




「…っ、…!」




 体が酸素を求めているのに、息ができない。

 苦しい、苦しい、苦しい。