…と。

 そのとき、会場のうわさ話に答えるように、「皆様」とスピーカーを通した声が響く。




「ご歓談中のところ、失礼いたします。これより、私共の娘であります、瑠奈を皆様にご紹介いたします」




 ステージでマイクを持っているのは、思慮深さがうかがえる、知的な瞳をした美女だった。

 会場中の視線がステージに集まると、婦人はにこりと微笑み、左に手を差し出す。




「いらっしゃい、瑠奈」




 婦人の声に答えるように、コツ、コツ、と足音を響かせて、ステージに2人の男女が現れた。

 1人は、白いマーメイドドレスに身を包んだ美女。

 その女性をエスコートしているのは、漆黒のタキシードに身を包んだ美男だ。