スマホで調べればいいのに、と思いながら右のほうを指させば、男の人はそちらを見る素振りもなく。




「あの、近くまででいいので案内してもらえませんか?この辺りは不慣れで、道を聞いてもたどりつける自信がなくて」


「はあ…」




 ちょっと不審(ふしん)かも、とは思った。

 でも薄っすらとした記憶を思い返してみても、ホテルはそう遠い場所になくて、近くまで案内するのは数分で済みそうだったから…。




「…分かりました。こちらです」




 私は男の人を連れて、カフェの前から移動した。

 ホテルがあるのは、この通りから二本奥の道。

 だから、すぐ横道に入って、人通りのない裏路地を歩いて行く。


 そんなとき。




西條(にしじょう)瑠奈(るな)、だな」


「え?」