それは、お茶会の帰りの出来事。

 学校が終わったその足で、クラスメイトたちと有名なカフェに行って。

 なんてことない話題で話し込んでいたら、すっかりオレンジ色から紺青(こんじょう)色の空へ塗り替わる時間になっていた。




西條(にしじょう)さん、お先に失礼しますわ」


「えぇ、また来週」




 迎えに来た車に乗り込む最後のクラスメイトを見送って、私はスマホの時間を確認する。

 …遅いなぁ。

 運転手に連絡しようか迷いながら、お店を出たところで「あの、すみません」と声をかけられた。




「はい?」




 左を向くと、キャップを被った男の人がうつむき気味に立っている。




「この近くに、ホテルってありませんか」


「ホテル…ですか。それなら、向こうのほうにあったと思いますが」