セージが私の体を確認する横で、金髪の男はおびえ切った声でその人の名前を呼んだ。

 その人は、お父さまが手放して床に落ちた包丁を、ハンカチを被せて拾い上げると、ゆっくりこちらに近づいてくる。

 解放されて、痛むのだろう頭を押さえたお父さまを、あごで()し示した壮士センパイは…。




「拘束しておけ」


「は…はいっ!」




 一言、命令するだけで金髪の男を動かしてしまった。




「…瑠奈」


「壮士、センパイ…」




 私の名前を呼んだ壮士センパイは、床にひざをついて、私の手足を縛るものを包丁で切る。

 それから、床の上を滑らせるようにして、包丁を部屋の隅に投げた。

 ハンカチをポケットに仕舞った壮士センパイに、そっと抱き起こされた私の肩へと、セージが止まる。