「っ…」


「さて、仕事中に抜け出したから、私には時間がないんだ」




 お父さまはスーツ姿でそう言いながら、私の前にひざをついて、私のウィッグを外した。




「うん、この子で間違いない。頼んだよ」




 その言葉が向けられたのは、出口をふさぐように扉の前に立っている金髪の男。

 本当に顔色ひとつ変えず、穏やかな声色で娘を殺すように頼むなんて…怖い人っ。




「お父さまっ、私知ってるから!私を殺して、隠し子を四條(しじょう)の後継者にするつもりなんでしょっ!」




 立ち上がったお父さまに、私は壮士センパイから聞いたことを暴露(ばくろ)した。

 お父さまは私を見下ろして、座り直す。




「おどろいたな。どこで聞いたんだい?そんなこと」


「最初に殺されそうになったとき、私を助けてくれた人から」


「へぇ…一体誰だろうな。困った、心当たりがないよ」