「はい?」




 慌てて、低い声を出す。




「きみって、西條(にしじょう)瑠奈(るな)だよね?」


「っ!?」


「お逃げください、お嬢さま!」




 セージが私の肩から、金髪の男の顔目がけて飛んでいく。

 私はすぐに立ち上がって、お弁当が地面に落ちたことにも気をかけず走り出した。




「待てっ!」




 うしろからセージの悲鳴が短く聞こえて、思わず振り返る。

 私の視界に映ったのは、目を見開いて追いかけてくる金髪の男と、地面に落ちていくセージの姿。

 一瞬足が止まったものの、前を向き直して走ると、まもなく追いつかれて、腕をつかまれた。




「誰かっ、たすっ…んぐ!」




 なりふり構わず叫ぶと、すぐに口をふさがれて、背中にバチバチッと痛みが走る。

 私の意識は、一瞬で途切れた。