「ですが、お1人では…」


「男装してれば大丈夫でしょ」




 少し投げやりに言って、私はシャワーを浴びてから、さらしとウィッグをつけ直した。

 セージを肩に乗せて外に出ると、お母さまやおじいさまがこっそり連れ出してくれた自然公園へ、バスに乗って向かう。




「こちらへ来るのは久しぶりでございますね」


「うん。お昼は…あそこでいいや」




 バスを降りて、自然公園の前に来ると、お弁当屋さんを見つけてふらりと寄った。

 適当なお弁当を買って、お母さまたちといつも座っていた湖が見渡せるベンチに向かう。

 緑は心を安らげるというけど…少しは、今の私にも効くみたい。




「食欲がありませんか、お嬢さま?」


「食べれるけど…今は、まだいい」


「そういう状態のときを、食欲がないと言うのでございますよ」