「っ、壮士センパイが夜城家の人間だって、誰にも言わない…でも、…信用も、できない…っ。ボディーガードは、別の人を探すっ」


「…」




 なんで壮士センパイが傷ついた顔、するの…?

 なんで私は泣きそうになってるの?




「どいて…」




 お願いして、離れてくれた壮士センパイとは目を合わせずに、体を起こす。

 ベッドから降りて保健室を出ようとすると、足の重さを突然思い出したようにつまづいてしまって。

 横から伸びた手に、体を支えられた。




「送ってやろうか」


「っ、優しくしないで…っ!」




 胸がズキズキする。

 壮士センパイの腕が離れると、私はゆっくりとした足取りで保健室を出て行った。


 その足が向かう先は、寮の自室。

 いつもの倍の時間をかけて寮に帰り、ベッドに寝転がると、不意に、抱きしめられて眠ったときの体温を思い出した。