無表情か、笑顔か。

 2つの表情しか見たことがなかった私は、ちらりと壮士(そうし)センパイを盗み見て、おどろいた。


 …なんで、そんな悲しそうな顔をするの?




「せ、セージから…私の執事から、聞いたっ。夜城(やしろ)は恐ろしい家だって…!」




 私が悪かったような気がしてきて、慌てて言葉を重ねる。

 それでも罪悪感が拭えなくて、壮士センパイが悪である理由を口にした。




「この学園に来たのは、セキュリティ情報を盗むため…そうなんでしょっ…!?」


「…」




 悪い人、なはずなのに。

 壮士センパイは悲しそうな顔をしたまま、否定も肯定もしない。




「…なにか…言ってよ…っ」


「…瑠奈(るな)




 そこで名前を呼ぶのは、ずるいよ。