クラスメイトの声も聞こえなかったふりをして、壮士センパイがいないほうの扉から教室を飛び出した。
走って向かう先はもちろんトイレではないけど。
休み時間の人混みに紛れるようにして、今日は保健室に逃げ込む。
「あら、西條くん、いらっしゃい。どうしたの?」
「ちょっと、お腹が痛くて…ベッドを使ってもいいですか?」
「えぇ、もちろんよ」
にこりと微笑まれて、頭を下げながらベッドに向かい、カーテンを引いた。
硬いベッドに腰かけながら、ため息をつく。
普段は私に会いに来たりなんてしないのに…なんで、本当のことを知ったタイミングでこんなにしつこく来られるんだろう。
セージから、裏社会のことについて詳しく聞いた。
平気で人をさらったり、売ったり、暴行したり、ときには命を奪ったり…。
そんな人たちが築いた社会で、そこでは夜城家が絶対。