「お姫さま、八代(やしろ)先輩とケンカしたのか?」


「え、な、なんで?」




 休み時間、机の上に広げたノートを閉じていると、クラスメイトに声をかけられる。




「なんでって、一昨日から避けまくってるじゃねぇか。八代先輩が会いに来てるのに」


「それは…べ、別に、なんでもないよ。都合が合わないだけ」




 私は目をそらして、手早く机の上を片付けた。

 次の授業は体力作り。

 またどこかに隠れていよう。


 そう思って立ち上がると「瑠奈人(るなと)」と私を呼ぶ声がにぎやかな教室に響く。

 聞き間違えることはない、この声は壮士(そうし)センパイの…。




「僕、お腹痛いからトイレ行ってくるっ」


「おい、八代先輩が呼んでるぞ!」