「なに、これ…」




 画面をスクロールする指が震える。

 別の人とのトーク画面を開くと、[夜城さま]と呼びかけられているのを見つけて、息を飲んだ。




「…やはり。納得されましたか、お嬢さま?」




 画面をのぞきこみに来たセージに問われて、震える手でスマホを元の場所に戻した。

 出した物も引き出しに仕舞い直して、数歩うしろに下がる。


 壮士センパイは、本当に…。

 私はベッドで眠る壮士センパイの顔を見てから、ウィッグとさらしを持って、小走りに玄関を目指した。

 セージが隣に来て「私が先行して人の有無を確認します」と言う。


 私は無言でうなずいて、セージだけが通れるように、寮の廊下に続く扉を開けた。