日本一有名な家と言えば、誰に聞いても四條(しじょう)家が真っ先にあげられる。

 私、四條(しじょう)瑠奈(るな)はそんな名家の一人娘。

 でも、賢者と(たた)えられたおじいさまの(はか)らいで、私は四條家の遠縁(とおえん)である、西條(にしじょう)家の娘といつわって16年間生きてきた。


 それは、おじいさまの娘であったお母さまが、最初は四條家を継ぐことに反抗していたからだと聞いている。

 私にはずっと、四條家の跡取りではなく、ごくふつうの一般人として生きる道が残されていた。




「お父さまに命を狙われてるのが本当なら、ボディーガードを(やと)わなきゃ…!」




 月明かりに照らされた部屋で、私はどくどくとイヤな鼓動をきざむ胸を押さえる。

 どうして実の父に命を狙われているのか?

 そんなこと、分かるはずがない。




「ですがお嬢さま、残念なことですが、この屋敷にいる者の中で誰が信用できるかなど分かりませんよ」