「ないない。無いです、不釣り合いです」

「でもさ、すなおちゃんってクラスではあんま喋んないのに翠くんとは仲良しだよねぇ」

グミちゃん……じゃなくて、えーっと……マズイ。
混乱してしまってうまく名前が出てこない…取り敢えずグミちゃんでいいか。

列車の中からずっと、グミをくれたからグミちゃん、なんて考えていたことが仇になってしまった。

グミちゃんは私の腕を掴んだまま上目遣いで私の目を覗き込んだ。

「そうそう。翠くんと喋ってる時だけすっごく自然だし」

こっちは巫女ちゃん。

というのは、もうずいぶん前から勝手にそう呼んでいる。

おうちが神社らしい。
クラスの子達と喋っているのを何度も聞いたことがある。

だから巫女ちゃん。

こうやってすぐに勝手に(仲良くもないのに)ニックネームをつけちゃうから
私はクラスメイトであっても本名を覚えるのが苦手だった。

最低な話だ。
名前の重要性を自分が誰よりも分かっているくせに。