「何よ」

「見て。藍の頭、左に傾いてる」

「そうだね?」

「寝てる時、傾く癖があるって指摘したことがあってさ。その日から藍は寝たふりで誤魔化す時、右に傾くようになった。藍はちょー真面目だからさ。″こうする時はこう″って決めたら無意識にその一回が癖になっちゃうんだよ。本気で寝てる時は絶対に右には傾かない」

「こわーい。双子の洞察力」

「へっへっへ。だからさ、今あいつには何も聞こえてない」

わざとらしく溜息をついてみたらなんだかネガティブな音に聞こえて心臓がドキリと鳴った。
翠に向かってネガティブな感情で吐いたわけじゃない。

そう、心の準備ってやつだ。

「一目惚れは認める」

「……ふーん?」

「本当にそっくりだと思ったよ。正に生き写し。でも違うとも思った」

「違うって?」

「そりゃあさ、私は翠のこと人として尊敬してるし、尊重してる。やっぱり翠と藍は双子であっても他人なんだよ。全部が同じなわけじゃない。まだ一日しか藍と関わってないクセにおかしいと思うけど。藍の痛みが分かる気がしたの。″守りたい″なんて烏滸(おこ)がましいけどさ。もっと近い場所で藍を知りたいって思った」