「変なこと聞かないでよ、急に」

「頭もいい」

「そうだね」

「親切だろ?」

「それはそう」

「はたから見れば藍とそっくりだろ」

「双子だからね」

「なんで俺じゃないの」

だだっ広いわけじゃない車内。
運転手さん以外で本当は起きている人がいたら、翠の声はきっと聞こえている。

何も言えない私に翠は更に言った。

「好きになっちゃった?」

「……なんの話?」

「大丈夫。藍には聞こえてないよ」

「わかんないじゃん」

「音楽聴いてるし」

「停まってるかもよ」

「もー。特別に教えてやろう」

翠は得意げに言った。