「翠が手放しで藍のこと尊敬して、信じてること」

「……そうだね」

「本当は違うの?」

「違うって?」

「藍は本当は……翠が思っているような人じゃないの?」

「そうだね」

藍の声はかすれていた。

「でもさ?″凄くない″ってことはないでしょう?現に藍は凄いもん。出逢って一日の私になんか言われたくないと思うけど。でも、今までいーっぱい藍の話聞かされてきたんだよ。もう散々ってくらい!だからちょっとは知ってるつもり。藍は凄いよ。普通はきっと十六歳じゃ藍みたいにはできないよ」

ちょっと我慢して。

藍はそう言って、私の隣に腰を下ろした。

ゴンドラの重心が傾く。
怖くはなかった。
泣き出してしまいそうな藍の瞳のほうが不安だった。