「せっかくだし乗り放題パス買おうぜ!」って提案した男子の声で
ハッと思い出したように翠が鞄をゴソゴソして
「さーんきゅ!お前のおかげで思い出した!」って男子に言った。

翠の手には七枚の名刺サイズのチケットが握られている。
男子が言った、テーマパークのアトラクション乗り放題のパスだった。

「旅行前にさ、ホテルの手配を父さんに頼んだ時にな。パークにも行くかもって話してたんだよ。そしたら出発前に用意してくれてさ。二日目ならもしかしたら藍も空いてるかもしれないからって、七人分」

「あーやっぱ翠、お前ってイケメンだよ!」

「やめろって」

ハシャぐ男子達と、ときめく女子達。
藍も「さすがだね」って言って微笑んでいる。

「それじゃあすなおちゃん、またお昼にねぇー」

「うん。アトラクション制覇してきてね」

笑いながらみんなに手を振って、別行動が始まった。
藍と二人きりになってしまった。

そっと右隣に立つ藍を見上げたら藍も私を見下ろしていてばっちり目が合ってしまった。

「どうする?パークで最初には変だけどお土産でも見に行く?店内は涼しいだろうし」

「ううん。せっかくパス貰ったし、えっと……アレは!?」

パーク全体が、遠くの街までもが見下ろせそうな巨大観覧車。
完全に勢いだったけれど、一発目で観覧車も変か……なんて思ったけれど藍は「いいよ」って目を細めた。