「じゃあこのタイミングで悪いんだけど。すなおちゃんもそれでいい?」

グミちゃんに訊かれて今まで第三者みたいな顔をして聞いていた私はギクリとした。

「えーっと……ごめんなさい。迷惑かけたくないから正直に言うね?」

「へっ!?」

「絶叫は死ぬほど怖いし、コーヒーカップみたいな乗り物はその……三半規管が弱いからすぐ酔っちゃってだめなんだよね……バスとかも酔い症だから酔いやすいんだけど、今日は迷惑かけたくないから……」

絶叫マシン大好き!を顔に張りつけた男子達と、
まぁ楽しめるなら全部全力で楽しんじゃお!って爛々とした瞳を輝かせていた女子達が一斉に表情を変えて私を見た。

ヤバ……また空気読めないこと言っちゃった。
でも私が絶叫激よわ人間なのも、爆裂乗り物酔い人間なのも事実だ。
さっきのリムジンバスだってこっそり酔い止め薬を含んで耐えていただけ。
こんなにハッピーな場所でみんなに迷惑かけるわけにはいかない。

藍だけがやっぱりクスクスと楽しそうに笑っていた。

「えっと、本当にほんとーーーにっ!私はこの雰囲気だけでも最高っていうか、今ここに自分も居るんだって事実だけでちょーハッピーっていうか…だからほら、私のことよりもみんなに全力で楽しんで欲しいから……だから……ごめん、空気壊しちゃって……」

俯く私を「もう、かわいすぎ」ってグミちゃんが抱き締めた。

「え」

「いじらしすぎ。人のこと気にしすぎ。みんながこう言ってるからって同調しないできちんと自分のこと言えるすなおちゃん、凄いことなんだよぉ?謝っちゃだめ」

「そうだよ。うちらはすなおちゃんに無理させちゃうほうが悲しい」

スン、と鼻を鳴らしたことに二人は気付いたかな。
目の端に浮かびそうになる水分に、
キュッて萎む喉の奥に。
″嬉し泣き″を、私は誤魔化した。

「でもそれじゃあみんなが…」

「いーじゃん。別行動でも、ちょっとなら」

藍の言葉に翠が「え?」って小さく言った。