「ふふ。ねぇ、すなお」

「ん?」

「翠は凄いんだ。あいつが思うよりもずっと。俺なんかよりも、ずっと」

「そう……なの?」

「うん。劣等感は感じたことなかった。悔しさはあったけどね。でもそれなら俺が努力すればいいだけだから。翠のセンスを凌駕できるくらいの努力をね。でもさ、」

「うん」

「きみみたいな子までそばに居ると思うとさすがに妬いちゃうなぁ」

「なに言って……!」

本当にこの人は何を言ってるんだろう!?
もしかしてビジュの良さや人を惹きつける魅力を利用して女を泣かせてる悪魔……ペテン師なのかもしれない。

「時々でいいからさ。俺ともまた会ってくれない?」

「へぁ……!?」

素っ頓狂な声を出した私の頭部にぽん、と藍の大きい手のひらが乗せられた。

死んだ。絶対に。

「スマホ持ってきてる?」

「え、あ、うん」

藍がポケットから取り出したスマホを私に向ける。

「えっと」

「交換。連絡先」

「あ……はい」

既にショートしている思考回路。
もうムリ。何も考えられそうもない。

おもむろに取り出した私のスマホ。
上の空の私にクスクスと笑いながら「ここ、タップして」とか指示してくる。

スマホに藍の連絡先が取り込まれた。
ただごとじゃないような気がした。