「すなお。藍、苦手?」

「そんなんじゃないよ」

「離れたそうだったから」

「きれいすぎて驚いただけ!」

「えっ、俺とおんなじ顔じゃん」

「そうだけど。違うの。違くないけど……」

「えー?」

ズンズン歩いていく私にくっついて歩きながら翠は不思議そうな顔をした。

ビーチに着いたらもうみんなは着替え終わっていて、
遅れてやって来た私達に「罰ゲームでイルカさんボート借りてきて!」ってグミちゃんが膨れていた。

やっぱりホテルの部屋で着替えていて正解だった。

「急いで脱いでくるね!」って言った私に翠が「えっち」って茶化した。

クラスメイトと来た海。
初体験のイルカボート。
全然続かないビーチバレー。

軽過ぎて風に流されたビーチボールが海に落ちて、
そのまま子ども達に持っていかれた。

かき氷も焼きそばもフランクフルトも食べるって欲張る男子に、
巫女ちゃんは「お腹壊すよ」ってまたお母さんみたいに注意した。

何をしても、誰が何を喋っても、
楽しかった。

ただシンプルに嬉しかった。

今、自分がここに居ることが奇跡みたいだって思った。