あれは突然だった。
「実は・・・」
父から呼び出され、家族全員でリビングに集まると。
「月がシュラナ学園に特別入学することになって・・・」
「ウソでしょう・・・!あぁ、神様・・・何故・・・」
父の重い口から聞かされた言葉に母が涙を流して神に手を合わせて何かを乞う。
私は黒姫月(くろきむうん)、もうすぐ中1だ。
シュラナ学園か・・・ん?
「シュラナ学園って男子校でしょう・・・?それなのになんで月が・・・」
母の言う通り、シュラナ学園は男子校だった気がする。
「ん~、まぁ、男子校ではないよ。暴走族がいるとかで女子が入りたがらないんだって」
兄はそう言って困ったように微笑むけど、それって男子校じゃ?
男子生徒しかいないんでしょ・・・?
女子生徒の受験生も受け付けてるらしいけど。
「月、断っていいか?」
父が私を見て訊いてくる。
「え~・・・ってかそれって誰から?」
「あぁ、生徒の推薦らしいが・・・今から名前読むけど知ってる子がいるのか?」
生徒からの推薦・・・なにか理由があるんだよね。
シュラナ学園の知り合い・・・男子、だよね?
「ええっと・・・?黒影空、黒虎雨、夜黒桃、黒羽苺?」
そら、あめ、もも、いちご・・・と父が読み上げる。
「お父さん、読み方多分違う。それ私と同じキラキラネームだよ」
「そうなのか・・・?(つき)が英語でムーンだから・・・スカイとレイニー・・・れいん?と・・・ピーチ・・・ぴいち?ストロベリー・・・べりい?」
「お~、セーカイ。お父さん、よくわかるね。レイニーから(れいん)は凄いよ。あと(べりい)も」
「ははっありがとう!」
娘に褒められて嬉しそうな父に私はニッコリ笑った。
「ごめんね、みんな」
「・・・なんだ?」
「どうしたの?」
「・・・月、まさか・・・」
父、母、兄が顔をしかめる。
「私、シュラナ学園行く」
「「「・・・っ?!」」」
面白い顔で固まる3人。
「じゃあお父さん?お母さん?よろしく~」
私は得意の作り笑いで手を振り、リビングを出て行った。