昼休み──。
「あの、よかったら一緒にご飯食べないっすか?」
遠慮がちに昊優(こう)が訪ねてきて、私はうーんと悩む仕草をする。
「そうだねー・・・誰かと約束はしてな──」
いんだよね、と言いかけたところで廊下が異常に騒がしいことに気づく。
「おい見ろよ!生徒会だぞ!」
「副総長たちだぞ!幹部が総長以外揃ってる・・・!」
「1年の階になんの用だろ?!」
イケメンが並んでても、女子じゃないから『キャー!○○くんカッコいいー!』とはならないようだけど。
ほとんどの生徒が生徒会・・・というよりもチュリの幹部に憧れを持ってるみたいだった。
「副総長!知らせ見ました!実家に帰ってたんで3限目からしか授業受けてないんですけどね!」
メンバーの1人が(すかい)に笑顔で言ったとき、空はその子より眩しい笑みで言ってしまった。
「あぁ、知らせを作ったのは総長だ。トーナメントのもな」
あちゃー・・・なにしれっと私が直接幹部たちに会ってたコトバラしちゃってんの。
「総長が?!・・・あれ、総長?!」
「は?・・・総長だ!総長!」
「久しぶりっす!編入してきたんすね!」
わー・・・やめてやめて。
めっちゃ目立ってるって。
チュリの総長は女だっていうのは噂になってるから、女子生徒と言えば私だけだ。
「・・・え?もしかして(むうん)・・・」
(しい)が驚いたような目を向けてくる。
海よ・・・キミとは普通の友達になれると少しは期待してたんだよ・・・。
・・・残念だ。
「そーだね。多分海が考えてるコト、合ってると思う」
「そ・・・っか。俺、チュリ・・・というか生徒会・・・いや、どっちも嫌いなんだけどね」
「あ、そー?じゃあ私も嫌いになるかな」
こてんとわざとらしく首を傾げ、海を試してみる。
さぁ海!
編入初日(?)の女子生徒を嫌って放っておくのか?!
自分の好き嫌いを優先するのか、女子生徒を優先するのか!
試されてるとは気づいてないだろうから、本音を出すと思う。
「とんでもない。もう月は大切な友達だから」
ありゃ・・・偽善者かと思ったけどホントにいい人?
「どうしたの、教室まで来て」
「ね、昼一緒に食べよ~?」
(れいん)が甘えるように腕を絡ませてきて、(ぴいち)に引き離されていた。
「そーだねぇ・・・ってあれ?」
よく見ると、空や雨、桃や(べりい)の後ろにまだいる。
「・・・勢ぞろいですなぁ・・・」
(すのう)(らいと)が嬉しそうに立っていた。
「なにしに来たの~?」
雨と同じテンションで訊いてみると、全員が満面の笑みで口をそろえる。
「「「「月とご飯食べたい」」」」
「「総長とご飯食べたい」」
あー・・・呼び方以外同じじゃないかい。
大丈夫なのか、幹部と幹部候補がコレで・・・。
私が引退したとき、やってける?
チュリ崩壊しなーい?
チュリは全員中学生で引退だ。
ただ、今の代は副総長たちの幹部よりも総長の私のほうが年下だから。
私が中3になるまで空たちも引退しないんだって。
・・・幹部交換トーナメントで現幹部の誰から落ちたら高1の時点でチュリは引退だからね。
でもチュリの兄貴分の族があって、高1からはみんなそっちに入っていってる。
名前は『カディ』。
カディの総長は、前チュリ総長だ。
おそらく、私がチュリを引退してカディに入り、カディの総長が引退したら私がまた総長だろーね。
「・・・まぁ、いいよ。空たちとは放課後生徒会室で会えるから、雪と光と食べていい?」
体育委員室も、行けなくはないけど昨日と同じような生徒会室との往復になってしまう。
だったらお昼を一緒に食べればいいんじゃないかと。
「・・・ん-・・・いいよ。2人も強いし、なにより月は腐っても総長だからね」
「腐ってもってなんだー?私はまだ腐ってないし、仕事放棄してるわけでもないぞー」
苺がにこやかにOKを出してくれたけど、そのあとに続いたセリフが気に入らない。
「あ、ごめんね。行ってらっしゃい」
私が怒るとヤバいと知っているのか、苺は冷や汗をかきながら手を振る。
ちなみに、私が本気で怒ったら国の1つや2つ、一瞬で滅ぼせる自信がある。
だってあれでしょ?
その国のお偉いさんを殺せばいーんでしょー?
余裕のよっちゃん鴉のかーちゃんだよ~。
・・・注意してね?
「そーちょー、行こ!」
雪が私の手を取り、どこかに向かって歩き出した。
結構早い歩き・・・コレは競歩か?
でも光は余裕の表情で私と雪に付いてくる。
「もう、走るのはだめだからな・・・」
まだ走ってはいないので、とりあえず忠告だけ。
センセーに怒られても知らなーい・・・。
そうなったら『ちょうど注意してたんですよ~。ほら、廊下は走っちゃ駄目って言ったでしょ~?』と言っておこう。
よくあるヤツ。
私は一緒に入っていません、注意してたんです、だから怒らないで。
・・・的な。
私は生徒会入って素行もいいと思われてるみたいだし、・・・大丈夫、だよね?