俺が好きになったのは、あいつを好きな愛菜ちゃんだった。


作った笑顔ばかりしていた愛菜ちゃんが心を開いてくれるようになって、あいつのことで一喜一憂している愛菜ちゃんからいつの間にか目が離せなくなっていた。


最初は、ただ友達としてそばにいられるならそれでよかった。



…だけど、やっぱりどうしても愛菜ちゃんに俺を見てほしくて思わずキスをしてしまった。


今考えてみても、本当最低なことをしたと思っている。


我を忘れちゃうくらい、俺はあの夏、愛菜ちゃんに本気の恋をしてしまっていたんだ。



「速水くん?なに、こんなとこまで連れてきて」



映画の撮影が終了し、打ち上げ会をしている最中に愛菜ちゃんを呼び出して近くの公園まで来ていた。



「んーいや、もう大丈夫なのかなって心配になってさ」



愛菜ちゃんはまだほんのりと残っている涙の跡を指でなぞりながら、「大丈夫だよ」と小さく呟いた。