だから、私の都合のいい幻聴かと思った。



「愛菜!止まれって!」



後ろからぐいっと腕を引かれ、気づいた時には懐かしいずっと会いたかった人に抱きしめられていた。



「梶…くん?」



間違うはずがない。幻覚でも、幻聴でもない。



「どうして、梶くんがここに…」


「エキストラ出演お礼ってことで、チケットもらったんだよ。だから、学校のやつらと来てて…って、おまえなんだよさっきの告白。なんなんだよ、今さら…」



体を離した梶くんが、泣きそうな顔で苦しそうに顔を歪めていた。



「あ…ごめん、本当に今さらだよね。私から突き放したくせに…。私が気持ちを伝えることで、梶くんが不幸になるくらいなら離れないとって思ったの。きっと忘れられるって思ってたのに、今もずっと私はあの頃と何も変わっていない…。ずっとずっと梶くんのことが好きなあの頃のまんまなの…っ」