何かを含んだような言い方をする速水くんは、マネージャーに呼ばれて「またあとでね」と残して行ってしまった。



「なにあれ…お母さんもそうだし、二人して意味がわかんない」


「本当にわからない?」



少し離れたところから話を聞いていたカナちゃんが、隣に並びながらそう聞いてきた。



「二人とも、愛菜に最後のチャンスだよって教えてくれてるんじゃないかな。今日が愛菜の大切に想っている人と向き合える、最後のチャンスだよって」


「…え?」



どうして…。だって私の初恋は、もうあの夏に終わったのだ。



「私はマネージャーとして、愛菜の背中を押してあげることはしない。今がどれだけ大切な時期か愛菜もわかってるでしょ?そんな時期に、愛菜の恋を応援してあげられるほど私は甘くないよ」


「…うん、わかってる」



もう全部が遅い。今さら梶くんを思い出したって、あの頃に戻りたいと思ったって、私に時間を戻せる術はないから。