「そう、かな…」



梶くんにチラリと視線を向けると、梶くんが何かを口パクで伝えながら、廊下の奥にある階段の方を指差してきた。


来て、ってこと…?



「ちょっと私、行ってくる…!」


「え?あ、愛菜ちゃん!もうすぐ撮影始まる…」



速水くんの声なんてもう聞こえてなくて、無我夢中で廊下の人混みを掻き分けて梶くんが指差していた階段前に行く。



「梶くん!」


「…悪い、撮影前だったのに抜け出させて」


「ううん、全然いいけどどうしたの?」



梶くんはバツが悪そうな顔をしながらそっぽを向き、首の後ろに手を当てていた。