「風邪引くなよ」



頭の上にパーカーを被せてきた梶くんを見上げる。



「…ありがと、誘ってくれて。おかげで青春味わえた」



梶くんはきょとんと首を傾げてから、ふっと優しく笑った。



「芸能人だから、とか関係ないんだよ。高城愛菜って人間が、少し歩み寄ってみるだけで世界は変わって見えるんだ。それを実際に行動したのは、愛菜だろ。俺はきっかけを少しあげただけ。…まあ俺も、ちょっと青春だなって思えたよ」



ふと梶くんが手を伸ばしてきたかと思うと、頬に張り付いていた髪の毛を優しく払ってくれた。


ほんの少し触れられただけなのに、それだけで頬が燃えるように熱かった。



…そうか。梶くんは、最初から私を“芸能人”としての高城愛菜ではなく、“ただの16歳”である高城愛菜として私を見てくれていた。


だから私も梶くんを同じ16歳の男の子としてまるで同級生になったみたいな気持ちで、素を出すことができていたんだ。