思わずぽつりと漏れてしまった本音に、ハッと我に返る。



「あ、友達がいないからできないとかじゃなくて、普通に学校に通えてないからってことだからね!?小中は学校が終わってからすぐに仕事に行っていたし、高校は時間がないから通ってないの。だからちょっと憧れだったんだ」



友達と寄り道したり、カラオケに行ったり。


日が暮れるまで好きな人の話をするとか、そんな当たり前の青春を私も味わってみたかった。



「だから、女優のお仕事は好きなんだ。演技だけど、高校生役とかしてる間は青春を味わえるから。…演技で青春を味わって満足してるのも、どうかと思うけどね」


「別にいいんじゃねぇの?青春の感じ方は人それぞれなんだから。俺なんて、青春だなーって思ったこと一度もねぇよ」


「ええ、それもどうかと思うよ」



さっきまで少し気分が沈んでいたのに、思わず噴き出して笑っていた。


素の私でいられるからか、梶くんと一緒にいると、なんだか落ち着く。



私は単純だから、今のこの瞬間も少しだけ青春かなと思った。