「…ああ、あれはつい、というか…目の前に好きな女がいるのに、手出さないほど男子高校生は甘くないよ。寸前で速水が来たから止まれたけど」



つい雰囲気に流されて、愛菜にキスをしそうになったあの日は俺にとって黒歴史だ。


でも、後からしておけばよかったと少し後悔もした。そうすれば、愛菜のファーストキスは俺だったから。



「せっかく俺はギリギリで止めたのに、あいつは躊躇いもなく愛菜にキスしたんだから…一生許さない」


「あはは、たしかに私もちょっとショックだったけど、他の初めては全部絢斗のものだよ」



にっと愛菜が俺に眩しい笑顔を向けてきた。



「初恋も、初彼氏も絢斗だけだもん。…あ、私の方が先に落ちちゃ…」



ぽとりと落ちた火を見つめていた愛菜に、そっと口づけをする。



「ちょ、不意打ち…!」


「はは、俺も愛菜だけだよ」



この先ずっと、俺たちの運命の恋は続いていく。


この夏が終わっても、ずっと…。